薬物療法では尿酸生成抑制薬と尿酸排泄促進薬で尿酸値をコントロールする。
前者は尿酸産生過剰型に処方され、後者は尿酸排泄低下型に処方される。
尿中尿酸量を増加させて結石ができやすくなるため尿酸生成過剰型に排泄薬の処方は不可。
結石予防として酸性尿改善薬(重曹またはクエン酸を併用することが望ましいとされる。1)
尿酸コントロール薬の効果は覿面だが服用開始後3ヵ月程度は再発しやすい。2)
なお欧米では副作用の危険が高まりやすいとして、
無症候性高尿酸血症に対する薬物治療に否定的な見解をとっている。3)
※無症候性高尿酸血症=尿酸値が高くても痛風・結石を発症していない状態
またイタリアとフランスでは尿酸分解酵素のウリカーゼがウリコザイムという商品名で臨床的に用いられている。
種類 | 投与量 | 一般名 | 商品名 |
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尿酸生成抑制薬 | 100~300mg/1~3回分服 | アロプリノール | ザイロリック |
アデノック | |||
アロシトール | |||
サロベール | |||
リボール | |||
40~60mg/1回分服 | フェブキソスタット | フェブリク | |
尿酸排泄促進薬 | 25~100mg/1~2回分服 | ベンズブロマロン | ユリノーム |
ナーカリシン | |||
ベンズマロン | |||
ムイロジン | |||
500~2000mg/2~4回分服 | プロベネシド | ベネシッド | |
300~900mg/1~3回分服 | ブコローム | パラミヂン |
医薬品名はウラリット(クエン酸ナトリウムまたはクエン酸カリウム)。
クエン酸は尿と血液をアルカリ性にすることによって尿酸値の亢進を予防する。
アルカリ性だと尿酸が溶けやすくなって結晶ができにくくなるからである。
具体的にはペーハー値が2下がるだけで溶解率に十倍以上の差が出る。
※溶解率=ph7では150-200mg/dl、ph5では15mg/dl。
飲酒するとphが極端に下がるので禁酒をするつもりのない患者には服用が推奨される。
補助的な位置づけだがクエン酸だけで尿酸値をコントロールできる場合もある。
ナトリウムかカリウムの結合型でなければ効果がないとされるがこれは誤りである。
クエン酸は体内でクエン酸ソーダに変化してアルカリ化作用を発揮するからである。
尿酸生成酵素キサンチンオキシダーゼの働きを阻害することで尿酸値を低下させる。
比較的安全な薬だがHLA-B*5801という遺伝子を持っていると重症副作用を起こしやすい。
HLA-B*5801遺伝子保持者の人種別比率は中国人で20%、日本人で1.2%、ヨーロッパ人で1.6%。4)
痛風治療で有名な両国東口クリニックもザイロリックの副作用による重度の皮膚炎を報告している。5)
アロプリノールは初め白血病の臨床試験に使われ、次に痛風の臨床試験に使われた。
ノースカロライナ州デューク医療センターのランドルたちは、
体内で6-MPを分解する酵素を阻害して6-MPの効き目を高めようと考えた。
この試みは成功はしたが、アロプリノールを組み合わせると毒性も強くなった。
そこでエリオンらは治験者の尿中に含まれる尿酸の量を測定してみた。
アロプリノールが尿酸生成酵素に作用することがわかっていたからである。
エリオンらの推測どおり、アロプリノールは尿酸生成を抑制していた。
そしてその後に行われた臨床試験において痛風を改善させる事が証明された。
アロプリノールには5種類あり、ザイロリックが最も良く処方される。
それに次いで処方されのがアロシトールであり、
残りのアデノック、サロベール 、リボールはほとんど処方されない。
2011年に承認された世界で約40年ぶりとなる高尿酸血症の新薬。商品名『フェブリク』。
帝人ファーマが1000億円かけて創製し、武田薬品工業が米国で開発した。
先行薬であるアロプリノールとの比較臨床試験の結果、
フェブキソスタットはアロプリノールより強い尿酸値低下作用を示した。
アロプリノールが効かない、あるいはアロプリノールでは尿酸値が下がり切らない場合でも、
フェブキソスタットなら尿酸値を正常範囲内まで低下させることができる。
プロベネシッドの20倍以上の効果がある尿酸排泄促進薬。
尿酸再吸収を行うURAT1を阻害することで効果を発揮する。
※プロベネシド=半世紀以上の歴史がある代表的な尿酸排泄促進薬。
臨床試験や研究が進んでいないため世界的には第一選択薬ではないが、
アロプリノールが有効ではない、あるいは副作用が生じた際に使用される。
1979年に日本で承認。ヨーロッパでも広く用いられているがアメリカでは使用されていない。
強力な尿酸排泄作用につき治療開始時に急激な血清尿酸値の低下とそれに伴う痛風発作を来し増悪することがある。
したがって初期投与量は25mg/日の少量より開始して、血中と尿中の尿酸値をチェックしながら150mg/日まで増量する。
維持量は投与開始前尿酸値の1/2。
なかでもユリノームは劇的な効果があることで知られ、血清尿酸値が軽く5.0mg/dlは下がる。
プリン代謝物質の尿酸をそれ以上分解できないのは霊長類と鳥類だけである。
基本的に哺乳類は尿酸分解酵素ウリカーゼにより、尿酸よりも水に溶けやすいアラトインに代謝できる。
魚類はそれをさらに水に溶けやすいアラトイン酸に代謝できるが、鳥類は代謝できないので糞として排泄する。
鳥の糞の大半を占める白い部分が尿酸であり、ヒトとは違って鳥では窒素も尿酸に変えて排便している。
ウリカーゼを体内で作用させる試みはOppenheimerが1941年に行った実験が最初である。
ブタの肝臓より粗精製したウリカーゼをトリに筋注もしくは静注すると約68~79%の尿酸が分解された。
この結果血清尿酸値が顕著に低下したが、投与を重ねるとアナフィラキシー反応をきたした。6)
ヒトにウリカーゼを投与する最初の試みはLondonが1957年に行った。
痛風男性55歳と健常男性63歳に無菌化したウリカーゼ104Uを静注したところ、
血清尿酸値はそれぞれ7.0mg/dlから5.5mg/dl、5.0mg/dlから3.0mg/dlに低下した。
そして尿中アラントイン排泄量も一時的に5倍ほど増加した。7)
続く1968年、Kisselがアスペルギルスから精製したウリカーゼをヒト13名に静注もしくは筋注した。
500Uだと作用は弱く血清尿酸値はわずかに低下したのみだったが、800Uでは約40%も低下した。
血液生化学などの変化は全く見られず、特に毒性は認められなかった。
その後1週間で尿酸値は元に戻った。8)